本当の頭のよさとは、知能指数の高さをいうのではありません。知能テストは練習さえすれば成績がよくなりますが、それでは脳の働きの一面しかわかりません。頭のよさとは、もっと総合的な話なのです。問題の本質を見抜き、どう解決できるか考え、行動を起こす。問題を解決するためには、外部からの刺激や過去の記憶を総動員しなければなりません。この能力を身につけるために、大脳の「前頭前野」に対して、成長時期に応じた適切な刺激を繰り返し与える必要があるのです。
脳は、生まれた直後から3~4歳ぐらいまでの間で急速に成長し、5歳には成人の脳の85%程度まで発達し終えてしまいます。記憶力・思考力・判断力といった能力を司る脳の最も重要な領域が「前頭前野」。この部分を赤ちゃんの時期に重点的に鍛えて、しっかりと基礎をつくっておくことが大切です。
脳の神経細胞をつなぐパイプ役である「シナプス」。これが増えるにつれて神経細胞同士のつながりが強くなり、情報の伝達スピードも速くなります。このシナプスの密度は、1歳前後が急速に上昇する時期。手を使う、体を動かす、感覚を鍛えるなど、同じ刺激を繰り返し与えながら脳を鍛えることが重要です。
久保田 競 先生
顧問
京都大学名誉教授、医学博士。脳科学者。東京大学医学部・同大大学院卒業後、同大講師を経て、京都大学霊長類研究所にてサルの前頭葉の構造と機能を研究。同大教授、同研究所所長を歴任。2011年春、瑞宝中綬章を受章。